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さまざまな伝統工芸が息づく金沢のまちで昭和16年に創業された「和紙工房まるとも」。
金沢は江戸時代より続く和紙の産地。まるともでは金沢の和紙を使い、
着物を包むたとう紙などの和紙製品をつくってきましたが、
現代では呉服産業も昔の繁栄はなく、和紙も洋紙にシェアを奪われてしまいました。
それでも和紙を生活に取り入れてほしい、
そしてそのよさをより多くの人に感じてもらいたいという思いから、
さまざまな製品を送り出しているのが、まるともの工房長の中山道男さん。

中山さんが特に力を入れているのが、便せんや封筒などの手紙にまつわる商品。
文字が書きやすいように三椏(みつまた)を主原料にした機械漉き和紙や、
手漉き和紙を使った商品もつくっています。
そのバリエーションはとても豊か。
たとえば、横に長い便せんがたとう紙に包まれている「長〜い和ごころセット」。
便せんを取り出すときにひもを解くと、着物の入ったたとう紙を開くときのように、
心ときめくような気持ちにさせてくれます。
ほかにも、渦巻き状に罫線が入り、手紙を書く人も読む人も
便せんを回しながら使うというユニークな「うずまき箋」など、
遊び心たっぷりの便せんも。
これらの商品はすべて中山さんのアイデアによるもの。
手紙というものによって、ちょっと楽しくなったり、うれしくなったりする。
そんな手紙を書くことの楽しさを伝えたいという中山さんの思いが、
さまざまな商品を生んでいるのです。

まるともでは手漉き和紙の折り鶴もつくっている。折り鶴に言葉を添えて送ったり、亡き人へ最後の言葉を書いたり、思いを伝える折り鶴として使われている。

またまるともでは、天然素材を積極的に商品に取り入れています。
古来よりさまざまな用途に使われてきた柿渋を使った雑貨などのほか、
「縞々和紙箋」などの手紙セットでは、手紙を収納するフォルダの留めひもに、
ウコン、抹茶、藍といった天然素材で染めたこよりが使われています。
安全な素材を使うことで、より手になじみやすく、
あたたかみが伝わってくる商品に仕上がっています。

手作業でこよりをつくる。紙をよってこよりにすることで強度が増す。ウコン、抹茶、きはだといった自然染料を使用。

現代の生活では手紙を書く機会が減ってしまっていますが、
中山さんの手紙に対する思いは並々ならぬものがあります。
「下手な字でもいいんです。たくさん書かなくてもいい。
でも手書きの文字でしか伝わらないものがあると思います。
いろいろな思いや言葉以上のことを伝えることのできる手紙にまつわるものを
つくるというのは、とてもいいことをしているんだと思っています」

手紙を出す相手や内容によって、いろいろな便せんと封筒を選んでみるのも楽しそう。
あの人、どんな顔するだろう。そんなことを考えながら、手紙を書いてみませんか。