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プロダクトブランド「(READYMADE)PRODUCTS」を
主導するのは、福岡県八女郡広川町にある吉田木型製作所の吉田いずみさん。
ブランディングをサポートしているのは、福岡を拠点に活動している
クリエイティブディレクターでデザイナーの中垣幸成さん。
(READYMADE)PRODUCTSは、吉田木型製作所の
技術を活用して立ち上げられたプライベートブランドです。

金型に樹脂を含有した砂を吹き込み、熱で砂を硬化させて砂型(シェルモールド)をつくります。

いずみさんの祖父が始めた吉田木型製作所は、昭和10年創業。
その名の通り、鋳造用の「型」をつくる工場を始めました。
隣まちである久留米市を中心に、広川町周辺のエリアでは、
軍事用のさまざまな鉄工部品を製造するための型の需要があったのだそう。
現在、吉田木型製作所では農機具や造船などの
機械部品の型など精密なものから、
公共の橋の欄干、地域モチーフのマンホールなど大型なものまで
産業向けを中心に、あらゆる鋳物の型をつくっています。

たくさんの砂型(シェルモールド)鋳造所への出荷を待つ。

そもそも、鋳造用の「型屋」とは、どういう仕事なのか。
鋳造は、砂でできた「砂型」に溶鉄を流し込み、
鉄が冷え固まったら、その砂型を叩き割って取り出すという工程。
その砂型をつくるにも、元となる型が必要になります。
この元型を専門につくっているのが吉田木型製作所の仕事。
現在は、用途に応じて木型、樹脂型、金型を製造、
さらに金型を用いたシェルモールドと呼ばれる特殊な砂型まで製造しています。
さまざまな素材の型を状況に合わせて対応できるのが吉田木型製作所の強み。
何より、熟練した技術を有する職人が揃っています。

WEEKENDERラウンドタイプの金型。これで砂型(シェルモールド)が製造されます。ラウンドタイプを製造するために金型は8型も必要なんだそう。

かつては公共事業などによる大規模な受注仕事が多かったけれど、
「これからは、培ってきた技術とノウハウを生かした、
吉田木型製造所のものづくりを外へも発信していくことが
必要なんじゃないだろうか」
そんな思いから(READYMADE)PRODUCTSを立ち上げました。

しかし実際に、製造、企画、販売までを自社で行うことを想定すると、
製造業にとっては、覚悟のいることだったそうです。
製造業であり職人集団である吉田木型製作所は、
受注したものをつくることには長けていますが、
自ら何かを生み出し、外へ発信することに対しては経験がない。
いずみさんは、ひとつひとつ時間をかけて実現可能な方法を選んでいきました。

改良途中のWEEKENDERのシェルモールド(砂型)。

プロジェクト自体の構想からすると足かけ4年、
(READYMADE)PRODUCTSの最初のプロダクト、
ダッチオーブンシリーズ「WEEKENDER」が完成しました。

この新しい試みは、自社の職人たちにとっても、新たな発見の機会となったよう。
これまで、自分たちが納品した型からどんな鋳物がつくられるかは
ほとんど見ることも知ることもなかったけれど、
WEEKENDERをつくるのは、最終的なかたちを見据えた作業。
今回のことで、製造に対する向上心や意識をより強く持つことができました。

使いやすいサイズ感で気軽にダッチオーブン料理を楽しめるWEEKENDER。
洗練されたデザインも反響が大きく、
販売開始後間もないけれど、オーダーが増え始めているのだそうです。
今後について中垣さんはこう話します。
「吉田木型製作所の技術には、
既存の鋳造専門の型屋にはとどまらないポテンシャルが眠っています。
(READYMADE)PRODUCTSでは、
『型から生まれるプロダクト』をキーワードに、
鋳物以外のほかの素材を使ったアイテムも
少し時間をかけて展開していく予定です」

吉田木型製作所のスタッフのみなさん。