飲む人にも造る人にも福が訪れるような酒
お福酒造は、新潟県長岡市の中心部より南東へ5キロほど行ったところの、
豊かな山林と自然清水を湛える長岡東山山系の麓にある酒蔵です。
創業は明治30年(1897年)。創業者の岸五郎さんは、
当時としては大変珍しい醸造技師であり、醸造研究者でもありました。
東京工業学校(現東京工業大学)の応用学科で発酵学、醸造学を勉強し、
創業前の明治27年(1894年)には全国初の酒造りのバイブル
『醸海拾玉(じょうかいしゅうぎょく)』を発刊。
これまで杜氏の勘だけに頼っていた酒造りを化学的見地から説いた
画期的な専門書でした。
特筆すべきは醸造用水の加工研究で、軟水による酒造りをいち早く可能にした点。
また適正酵母の純粋培養に成功し、当時恐れられていた
腐敗を防止できるようになったことで、醸造業界に革命を起こしました。
この技術はのちに「速醸もと」と呼ばれるようになり、
現代の酒造りの基本となっています。
「醸造は、一つの活劇場なり、その千変万化、究極とするところなかるべし」
とは、岸五郎さんの口癖だった言葉。
冷却装置もなく、今よりもずっと酒造りが難しかった時代に、
自然の気温や湿度を見極め、その都度修正を加えて
全身全霊で取り組んでいたことがうかがえます。
こうした酒造りの精神は現在も受け継がれており、お福酒造という名の通り、
飲む人にも造る人にも福が訪れるような酒造りを追求しているそうです。
お福酒造の直営店「福の蔵」では、ここでしか買えない大吟醸原酒の量り売りが人気。
試飲コーナーではお福酒造のさまざまなお酒を味見することができます。