自社農園だからこそ、おいしい茶葉を
大分県との県境にあるまち、福岡県うきは市。
筑後川が流れ、肥沃な土地では農業もさかんです。
そんな自然豊かな地で40年以上も有機栽培のお茶を生産しているのが「新川製茶」。
茶葉の栽培、製造、販売まで一貫して行っているからこそできる、真摯なお茶づくり。
水源の森100選に選ばれる山あいの地で、棚田で茶畑を管理し、
摘みたての茶葉を近くの製茶工場で加工、自分たちで販売までを手がけます。
なかでも新川製茶が大切にしているのは茶葉を育む土づくり。
化学農薬、化学肥料、除草剤を一切使わず、
有機質の肥料に微生物を入れて発酵させる、ボカシ肥料を施しています。
「これにより、茶の木が渋みの成分を出して、自ら害虫から守るようになるんです。
だからこそ、舌にじんわり残るような自然な渋みと
まろやかなやさしい味わいが茶葉に生まれます」
と話すのは、現代表で、三代目の樋口勇八郎さん。
このような有機栽培に切り替えたのは、樋口さんのご両親。
使っていた農薬で、自身が体調を崩したことをきっかけに、
化学農薬を使用することをやめたそうです。
しかし、それは約40年前のこと。
当時は有機栽培はあまり例がなかったため、
「親父たちは犯罪者くらいの扱いだったと聞きます。
“無農薬でできるわけないやん”と厳しい意見が多かったようです。
僕自身も、若い頃は青年部の人たちと接していると
悪いことはしていないはずなのに、肩身の狭い思いもしましたね」
と樋口さんは振り返ります。
毎年10月にお茶の剪定を行って、翌年4月くらいに新芽が出てきます。
葉っぱが3、4枚出てくる5月くらいから、新芽のいいところだけを摘み始めます。
より若い世代にも楽しんでもらえるようにと、
煎茶のほかにも、玄米茶、焙じ茶、紅茶も加工。
茶葉を大切に育てるだけでも時間がかかるのに、
それぞれ丁寧な製法で加工していく新川製茶。
まさに手間ひまかかるお茶づくりを行っているのです。
「手間と時間はかかりますが、売り上げがマイナスじゃなければ
いいかなと思っているんです。赤字はよくないですけどね(笑)。
人に“おいしい”と感動してもらうのはすごいことだと思うから、
手間がかかって当たり前。
それに、完璧なものをつくるとか、品評会で評価されるとか、
そのためにお茶をつくっているわけではないんです。
父と母が大切に育んできた土には、いま、カマキリ、てんとう虫、トカゲ、
いろんな生物がいるようになりました。
そうやって食物連鎖が保たれていると、農薬をやらなくても、
被害は多発しないことが多い。
このうきはの山の中の環境と共生しながら、
おいしいお茶をつくりたいと思っています」
右が樋口勇八郎さん、左がお父さまの八郎さん。