作家ではなく、民藝として器をつくり続ける
やちむんとは沖縄の言葉で焼き物のこと。
食器や泡盛を入れる酒器など、生活道具として
暮らしのなかで脈々と愛用されてきました。
その歴史は古く、海上貿易を盛んに行っていた琉球王朝時代に
南国諸国の陶磁器が大量に輸入されたことで、
技術や質が著しく高まったと言われています。
江戸時代に薩摩から朝鮮人の陶工を招き技法を指導、
その数十年後には各地に分散していた窯場を那覇の壺屋地区に統合して、
やちむんのルーツのひとつである「壺屋焼」が生まれます。
壷屋焼の焼き物は琉球王国随一の窯場となり、国内消費や交易に利用されました。
明治から大正時代にほかの産地の安価な焼き物が流通したことで、
壷屋焼は一旦低迷期を迎えますが、
大正の終わり頃に柳宗悦・濱田庄司らによる「民藝運動」が起こり、
沖縄の焼き物の持つ素朴さ、ひたむきな職人仕事と
鮮やかな彩色・実用性が高く評価されて再生。
沖縄本土復帰後の1972年、壷屋焼の陶工であり読谷村で作陶していた
金城次郎が沖縄県初の人間国宝に認定され、沖縄の焼き物の評価もより高まりました。
近年、民藝の再評価とともに、沖縄のやちむんの持つ素朴さに
「人間らしさ、自分らしさ」を感じる若い世代が大変多くなっています。
土づくり・釉薬づくりから人の手で行い、
火の神に祈りを捧げてから窯に火をつける、沖縄のやちむん。
スピーディかつ大量の情報や流行に翻弄されがちな現代人にとって、
いまも沖縄で続いている昔ながらの手仕事の器は、
きっと心休まるひとときを提供してくれるに違いありません。
ゆいまーる沖縄は「琉球の自立を目指す」という思いから
1988年に創業した沖縄県産品を扱う会社。
やちむんをはじめとする伝統工芸品や食品など、
沖縄や琉球のものにこだわった商品を取り扱っています。
陶眞窯(とうしんがま)は、国内外で数々の賞を受賞している
沖縄で最も大きなやちむん工房のひとつ。
陶眞窯を主宰する相馬正和さんは66歳を数える名工です。
大きな工房とはいえ、陶眞窯が行っているやちむんづくりは
いまとなっては珍しい完全分業制で、職人を育てること、
土づくりから自分たちで行うことなど、その姿は昔ながらの工房そのままといえます。
工房に在籍する職人さんだけでなく、相馬さんの息子さんがろくろを引き、
娘さんが絵付けをして、家族ぐるみで陶眞窯をつくり上げているのも特徴です。
相馬さんが「日常で使える温かみのある器を目指している。
作家ではなく民藝でありたい」とおっしゃる通り、
陶眞窯の器は日常的に使いやすい形で、沖縄独特の大らかな絵付けが魅力。
沖縄の赤土に白化粧を施し、華やかな絵付けの映える焼き物は、
明るい沖縄の日差しが思い出されるような魅力に満ちています。