山形県上山市の自然と人々の手間ひまが生んだ芸術品
山形市の南にある上山市は、蔵王山の麓に位置し、
四季の移り変わりが鮮明な盆地です。
さくらんぼやブドウ、ラ・フランスなど
さまざまなフルーツの産地として知られていますが、
上山市内の限られた地域にしか実らないといわれるのが紅柿です。
原産地は上山市の本庄地区とされ、栽培に適しているのは、
日当たりと風通しがよく、乾燥地で寒暖差のある気候。
しかし接ぎ木や移植をしても、不思議なことによその土地では
同じような紅柿を収穫することはできません。
紅柿は赤橙色で、名前の通り赤みが強いのですが、
見た目に反して柿のなかでも特に渋みが強いため、
300年も昔から干し柿にして食べられてきました。
秋が深まると、この地では一斉に紅干し柿づくりが始まり、
1本の縄にいくつもの柿をくくり、すき間なく吊るした
オレンジ色のカーテンがあちこちでお目見えします。
この吊るし方にもコツがあるそうで、
1本の縄に吊るす柿の質や大きさを均等にしなければいけません。
屋外に吊るされた柿は、太陽の光をいっぱいに浴びながら寒風にさらされます。
当然、雨や雪は大敵です。2週間ほど外で干すことでゆっくりと水分が抜け、
さらに室内で火力乾燥を行って、1週間から10日間ほど寝かせます。
その後、柿ひとつひとつにブラシをかけて細かい傷をつけることで、
白い粉を吹かせます。天然のスイーツとはいえ、
徹底した管理と手間ひまをかけなければ生まれない紅干し柿は、
上山の自然と人々のコラボレーションによる芸術品といえるでしょう。